2013年12月23日月曜日

卑弥呼と絹

若泉ファームさんの卑弥呼が今年のつぼみを上げてきています。若さまのブログでも今年は花が早いようだと紹介されています。

我が家では昨年初めて入手した物で、今年は二年目になります。開花も二年目の株なのかと思います。例年だと年が明けるくらいからつぼみが伸び始めるので、今年は年内に伸びちゃって大丈夫かなぁとちょっと心配しています。

旺盛に生育していたので、11月下旬にばっさりと古葉切りをしています。今残っているのは秋から伸びてきた新葉が数枚と、株元にもう一つのつぼみです。

直射日光を一杯浴びて寒さにも当たっているので、濃くしっかりした色で咲いてくれるだろうなと期待しています。あとは寒波で傷まないといいなぁ。

お絹さんは今年は受難の年でした。秋真っ盛りにやってきた大型台風で葉を数枚折られてしまったり、棚の上から鉢ごと転げ落ちたりさんざんです。それでも元気に丈夫に育ってくれています。

こちらも秋から全日射で日に当てているので、だいぶ黄色っぽい葉になっています。葉焼けはしていないので大丈夫でしょう。株元に大きな芽が二つあって、どちらからも小さなつぼみが見え始めました。待望の絹の花が見られそうです。

それ以外にも葉芽が四つ程付いていて、意外にも絹は増殖率がいいんだなぁと感心しています。初期生育はのんびりで難しいようですが、大株になると丈夫でペースが上がってくるタイプのようです。

こちらも風よけをして寒波で傷まないように注意しています。週に一度うすーい液肥を上げて防寒と肥培に役立てています。さて、どれほど綺麗な花が咲いてくれますか。

まずは二月まで我慢です。

2013年11月4日月曜日

くるい咲き?

原種のアトロルーベンスが、今年は早くも咲き出してしまいました。完全な狂い咲きってやつになると思うのですけど、花を見ると意外としっかり咲いている?

これは現地コレクトの種子より育った株なので、園芸種と交雑している可能性は無いようですが、現地では場所によって他の原種が混生しているところもあるようです。

コレクターズナンバー持ちの個体なので、調べればどこか分かると思いますが……スロベニアのサイトだったような気がする。

アトロとしては比較的珍しい緑だけの個体で、花も大きくて形が良いので気に入ってます。台風で何度か鉢がひっくり返ったり今年は受難の年だったので、危険を感じて早く咲いちゃったのかなw

2013年7月23日火曜日

夏のお絹さん

最初、タイトルを「夏のお嬢さん」としようと思ったんですが、それではあまりにも年齢がばれるという…これ書いたら意味ないですが。

とんでもない猛暑になった今年の山梨です。クリスマスローズもだいぶ暑そうにしていますが、日陰に避難している株はそれなりに元気そうです。

お絹さんも朝日だけ当たる一角に置いています。左下に写っている鉢が、地上部が消えてしまったチベタヌスの鉢です。枯れるの早かったなぁとか、大丈夫かなぁとか色々心配です。

葉脈が白く抜ける性質は今年は春から継続していて、葉が硬くなった現在もこんな風に綺麗なままです。ちょっと緑が浅い感じがするので、肥料切れしてるのかなと思います。

お彼岸過ぎて涼しくなったらしっかりと肥料を上げないと。でも、あまり肥培しすぎても箱入り娘のお絹さんには良くない感じもする。新芽の動きを見ながらボチボチ上げていく方が良いのかもしれません。

2013年3月19日火曜日

葉の美しさ

二つ目の葉芽も元気に生長中のお絹さんです。展開中の新葉は、葉脈に沿って入る白い模様が目立ちます。上に写っている葉のように、ある程度固まってくるとこの白っぽい模様は徐々に薄れていって、最後は分からなくなってしまいます。

昨年とはずいぶんと葉の雰囲気が変化してきました。大きめの鋸歯が全体に入るのは同じですが、所々不連続に欠刻が入ります。この性質がチベタヌスから来ているのか、ニゲルから来ているのか分かりませんが、面白い現象だとみています。

エリックスミシーの品種の中に、この葉のような編み目に白く抜ける模様を持つ品種があります。最初それはリヴィダス由来の形質だと思っていたのですが、最近になってどうも違いそうだと思い始めました。

ニゲルのマーブルリーフを見た時に最初に引っかかりを感じたのですが、このお絹さんの葉を見ていてやっぱりそうなのかなぁと。この形質、どうやらニゲルの方にありそうです。葉脈に添って葉緑素の発現が遅れている、一種のアケボノ斑なのではないかと思い始めています。 ただ、ニゲル・マーブルリーフの場合は後暗みしないので、こういうタイプを何代か継続していると固定化するかもしれません。

それが植物にとって幸せな方向なのか、不幸なのかは分かりませんが。来年は桜色のおしとやかなお顔を拝見できる事を期待して居ます。

2013年3月16日土曜日

斑入りのリゲルその後

なんかもう、かなりのノンビリさんで。そろそろクリスマスローズも終わりだよと言う今頃になって、小さなつぼみを上げてきました。

それだけ「斑入り」というのは生長阻害するんだなぁとしみじみ感じています。人の目から見ると美しいと感じたり、珍しいと思ったりするこの斑入りですが、植物にとっては迷惑な事この上ない現象ですね。

芽数は良く増えています。斑の入らなかった兄弟株はどれも2~3芽になっているのに対して、この株だけ6芽に増えています。

葉の枚数も多いですし、一枚あたりの光合成が減ってしまうのを補うために、必死で枚数を増やしているって感じがします。花なんか咲かせてる場合じゃないと。それでも天芽につぼみを持ってくれたのは、ようやく花を付ける余裕が出てきたのかなと少しホッとしています。

相変わらず完全な青葉は出にくいようで、うまく斑が散ってくれています。継続性は高そうなので、株分けしながら少しずつ増やしていこうかと考えています。

 デュメトルムのダブルは順調に生長中です。Selfで付けたタネもしっかりと出来ているようで、充実してくれるのを待っています。

何粒採れるかなぁ。

2013年3月10日日曜日

大木さんの即売会

大木ナーサリーさんの即売会に行ってきました。今シーズンはこの土日で最後なんだとか。この頃はやけに暖かい日が続いているので、一気に開花が進んだ感じもあります。

色々なタイプが所狭しと並んでいるのはやっぱり即売会ならではですね。場所は例年通りの gallery trax です。大木さんと言えば原種、ってイメージがありますが、オーソドックスなハイブリッドも普通にあったりします。

今回並んでいたのは、どちらかというと大木さんのイメージ通りというかw 原種交配と表現される、原種の形質が強く表れている物が多かったように見えました。

大木さんはラベルに「○○Fx」って感じに、原種と掛けてから何代目だよというのが分かるように書いてくれます。デュメトルム、ムルティフィダスなどの F3が目に付きました。

室内の展示はこんな風におしゃれです。テーブルと壁が白くて、古びた木目の床といい感じで対照的です。そこに飾られたポットは何だかブティックに並んでいるアクセサリーのようです。

ただ、黒ポットそのままなのでかなりワイルドですがw
以前の即売会で、自生地の雰囲気を再現する試みをされていた事があります。

床に落ち葉を敷きつめてそこにポットを埋めるように飾っていました。あれはとても大変だったと思いますが、雰囲気はいい感じだったなぁと思い出します。

壁に飾っている写真は大木さんが撮ってこられた自生地写真が並んでいます。いくつか説明して頂きましたが、直接見る事の少ない自生地の雰囲気が色々と想像できて、写真を見るだけでも十分に楽しい展示でした。プルプラセンスの青っぽい花にはびっくりしました。

 そんなわけで本日のお持ち帰りは、こちらのプルプラセンスがまず一つ。大木さんのNSで咲いてきた花だそうです。

色合いというか、紫の入り方がなんか不思議な感じがします。プルプラらしくないというと変ですが、 自分が今まで持っていなかったタイプです。

苞の形もだいぶ違う感じなので、ハンガリーの個体しか比較対象がありませんが、これはどこか違うところのプルプラセンスの子供なのかもしれません。

肉厚な花びらはやっぱりプルプラなんですけどね。ぎゅっと固まった雄しべの感じとか。

もう一つはムルティ交配 F3の表記があった、多弁タイプのバイカラーです。表側にはベインも入るようで、なかなかにどぎつい色彩のお花。

個人的に嫌いじゃないこのタイプですが、多弁タイプは初めてかもしれませんね。これで横向きでどばっと開いたらさすがに引くかもしれないw

この一番花は雄しべが正常ではありませんでした。花粉が出ないタイプといいますか、小さくなって元で固まってしまっているもの。ただ株が若くて力不足でそうなっているのか、交配の結果雄性不稔になっているのかは分かりません。

見た感じでは前者じゃないかなと思いますが、面白そうな雰囲気を感じたので何か交配してみようと思います。雌しべは正常な感じなので。

ムルティ交配は背が高くなるものが多いのですが、これは大木さんが言うコンパクトタイプなのかもしれません。葉の茂りの上で花は咲いていますが、 15cmくらいの所でしょうか。以前に見た事のあるこの兄弟株という花は倍以上の背丈が出ていたので、雰囲気がかなり違いました。

のっぽさんも好きなんですけどねー。この子供たちはどうなりますやら。

2013年3月6日水曜日

変わった模様の花

二年前に実生一年苗で購入した「花あそび」さんの原種交配苗が咲きました。当時はヤフオクでの購入だけだったかな? いくつか原種交配を落札していて、その内の一つです。

今年はこの一つだけですが、来年以降色々咲いてきますので、花あそびさんの交配には注目しています。もうお一方、ヤフオクで出している個人の方のお花も注目しているのがあるのですが、そちらの方はネットショップなどはやっていないようで、趣味の範疇で楽しんでおられる様子。

さてこの花は原種交配のDDグリーン吹っ掛け絞り小輪にDDデュメトルムを交配したものだそうです。写真だと分かりにくいですが、直径が 2.5cm程の小輪で最近の陽気にも関わらず、開くのに一週間近く掛かったという身持ちの堅いしっかり者です。

花弁はややサイズが小さいので、来年以降変化するか、このままか判断が難しいですが、初開花の為本来の状態では無いと考えています。

 特徴的なのがこの不規則なドット模様。吹っ掛けという表現がまさしくそのままで、あえて英語風に言うなら「ダップルド・バイカラー」って感じでしょうか。

スポットと言われている模様は規則性があります。この模様には規則性を感じません。全体としてみれば幅の広い覆輪状に散っていますが、いくつかは中央にも飛んでいます。

スポットなどの遺伝子とは異なる、別の遺伝子が支配していると思います。トルカでこういうタイプの模様を見たことがあるので、種子親の方にそういう遺伝子があったのかなぁとか。

正面には入りませんので、もっと緑が不透明になれば透けずにコントラストが綺麗になるかと思います。夢花人さんがデュメを使うと色が濁るから好きになれないと仰っていますが、まさにその濁る、抹茶のような不透明感を強くすれば表裏のコントラストが上がってキレが出るんじゃ無いかと考えています。

元々の交配の狙いがその辺にあった気がするので、ひとまずはセルフで。DDデュメは既に花が終わってしまったので、戻し交配はうまくいって来年になりそうなので、セルフでどこまで抹茶になるか見てみようと思います。

2013年3月3日日曜日

出てきちゃいましたw

前にちょこっと書いていた、今年の発芽苗で芽が出てくるかな、どうかな、と考えていたものです。蒔いたタネが発芽しないよりは出た方が良いじゃないか、と叱られそうですが、交配の組み合わせを考えると出てこないこともあるのかな~なんて密かに思ってました。

予想とは往々にして裏切られるもの。むしろ斜め上を行ってこその予想! なんて訳でもありませんが、自分の中でもっとも気にしているタネたちはとりあえず二本発芽してくれました。全部で5粒しか採れなかったので、残り3粒も元気で出てきてくれるかな、それともダメになっちゃったかな……

右下の最初に出てきた双葉を等倍で切り出してみました。後ピンで見にくくて申し訳ありません。さてこの双葉、発芽してそろそろ5日程経過するんですが……ちょっと妙な感じがしませんか?

どこがどう、とはっきり言えないのですが、他の双葉の初期状態と比べると、厚ぼったくみずみずしい感じで、このあと生長して大きくなるのかなぁ、と疑問を感じます。

有茎種のリヴィダスがこんな感じの双葉を出してくるんですが、この種子は全く関係ない交配です。少しネタバラしすると種子親はリグリクスです。花粉親は、さてなんでしょうw この交配するのはけっこう苦労してタイミングを合わせた、がヒントです。けっこういろんな人が既にやってるんじゃないかと思いますので、もう咲いてる花もあるんじゃないかな。

咲くまでどの位掛かるか分かりませんが、リグリクスの早生な性質を受け継いでくれると嬉しいです。ついでに香りもw

2013年3月1日金曜日

今年の「お絹さん」の様子

我が家に来てから丸一年と半月程が経過した今日、二回目の植え替えを行いました。植え替えといっても鉢増しなので、根にはあまりダメージは与えていないと勝手に思い込んでますw

今までの鉢は中深鉢の5号サイズ。これからバラ用の6号のロングポットに鉢増ししました。下から1/4はナチュライトの大粒がたっぷり入っていますので、水捌け抜群です。

用土は昨年植える時に使った原種用の配合に、今年の改良を加えたもの。昨年後半くらいから今の配合に切り替えていますが、トルカやデュメなどの根傷みがかなり減ったので、今の配合がベストなのかなと考えています。

愛称で「お絹さん」と呼んでいますが、これはご存じの通り若泉ファームさんの「絹」です。秋頃に新芽の芽当たりが大きくなってきたので、もしや!? と勝手に盛り上がっていましたが、やっぱり花は咲かずに葉芽でしたw さすがにお嬢さま、そう易々と心を許してはくれないようです。

反対側から見るとこの通り、もう一つ葉芽が動いていますし、親の頂芽も新葉を展開してきました。植え替えの時に見た感じでは傷んでいる根も無さそうでしたので、まずまずの栽培だったのでは無いかとホッとしているところです。

ニゲルそのものだと古い葉先が傷む事はまだ無いのですが、年明けくらいからちょっとずつ葉先が茶色く枯れ込んできました。これは灰色カビ病にでもやられたのか、と殺菌剤を散布していますがあまり効果が無い様子です。

落葉性のチベタヌスの血がそうさせるのか、でもチベタヌスだって葉が枯れるのもっと後だよなぁとか、昨年届いた時はどうだったっけ? とか色々考えてしまいますが、新葉が傷み無く展開すれば大丈夫だろうと決め付ける事にしました。考えてもよく分からんしw

 昨年出てきた新芽は、本当にうっすらとだけだったのであまり気にしていませんでしたが、お絹さんの葉って模様葉なんですねぇ。

葉脈に沿って白く抜ける、リヴィダスなどに見られる現象です。ニゲルのマーブルリーフだともっとはっきり表れたりしますが、お絹さんの葉の感じだとテンナンショウの銀葉っぽい感じもして好ましいです。

よく見ると小葉の付け根の辺りはうっすらピンク色も乗っていて、新芽が伸びて葉が展開してくるこの時期だけの美しさだよなぁと、瑞々しい新葉を堪能しています。葉が完全に展開して革質な感じに硬く、厚ぼったくなる頃にはこのピンク色も、模様も消えてしまうと思いますが、それまでは毎日ニヤニヤしていようかと思います。チベタヌスの形質なんでしょうかね~。

2013年2月25日月曜日

頂き物の小輪バイカラー

つぼみが見え始めた苗を頂いたものですが、咲いてみたら小輪で可愛らしいダブルの花でした。

背面は濃いめのパープル、正面はミスト状に薄くパープルが乗るベースはピンクの花です。現在の大きさは小輪と言っていい 2cm程のサイズですが、小さなポットで咲いた株なので来年は一回りくらい大きくなるかもしれません。

実生のクリスマスローズの面白いところでもあるんですが、初開花の姿と二年目、三年目でまるで違う花のように変化する株があります。育種をしている人はその辺りも見据えて、親株を把握した上で選抜を行っていくと思いますが、これこそ経験でしか得られないテクニックの部分です。

この花はデュメトルムの交配系に更にデュメトルムのダブルを戻し交配した小輪を狙った花だそうです。狙いはほぼ成功していると考えていいのではと思います。

 根の張りが良かったので 12cmロングポットに植えていますが、花茎の高さは8cmあるかないかという可愛らしいタイプ。

ダークレッド系は自分の好みですが、このくらい可愛い花だと明るいピンクの色合いも似合いそうだと思います。

小輪のライトピンクが手元にあるので、それ辺りが交配相手に向いているかもしれません。

2013年2月22日金曜日

Fairies Dreams が届きました

花のアップだけになってしまいますが、夢花人さんのバイカラーのお花です。全体像は写真失敗してたw のでまた後日に。

Fairies Dreams シリーズのお花という事でいいと思うのですが、違っていたらごめんなさい。かっちりと揃った花びらなのに、どこかふわりとした印象があります。

これから雄しべが綺麗に開いて、更にフワフワな感じの咲き方になるそうです。知り合いの女性がこの花を一目見て「頂戴!」と叫んだのがw

一目惚れだそうで、株分けできるようになるまで待ちなさいと、なんとか言いくるめています。とても可愛い花だし、確かにこれは欲しがるだろうとは思いましたがw

もう一つ一緒に届いたのですが、そちらはかなり印象の異なるタイプ。それもいずれご紹介しようと思います。

2013年2月19日火曜日

クリスマスローズのダブルは「退化」でしょうか。

今日は珍しくまじめな話をしようと思います。それというのも、知り合いがクリスマスローズの講習会で、ちょっと気になる話を聞いてきたと教えてくれたので。

その話とは、「クリスマスローズにとって、ダブルの花は退化したものだから、花にとっては本来良い物では無い」、「シングルこそが正常な状態なのだから、ダブルはいずれ無理が来て廃れる」、というような意味あいの事を聞いたそうです。

この話って本当なの? とその人から尋ねられたわけですが……おいおい、これってたぶんに情報操作なんでは無いか? と引っかかりを感じたので、ここで自分の考えをちょっと書いてみようと思った次第です。

「退化」という言葉はネガティブなイメージがあると思います。形態学などで使う退化の意味は、本来の働きを無くしてしまった器官を指して使う言葉であり、小さくなっていたり無くなったりしたものに対して使います。それはあくまで『進化の過程で』適応の一つとして起こった変化であって、ネガティブではなくポジティブな結果起こった事です。

つまり植物にとって退化の結果変化した器官は、進化の結果であるという事です。クリスマスローズでよく知られているのは、蜜腺(ネクタリー)が花弁が退化したものであるという話ですね。キンポウゲ科の植物は一般的に花弁が消失している物が多く、ミヤマハンショウヅルやテッセンみたいな例外を除くと、蜜腺という形で有る以外は花弁を持ちません。

蜜腺は文字通りに花蜜を分泌する器官で、甘い蜜を使ってポリネーターであるハナバチとかミツバチとかみんな来て~、と呼び寄せる為に使われると考えられています。 お陰で脱落したネクタリーって、ベタベタして取り除くの面倒ですよねw

ここまでで最初の講習会の話の矛盾点にお気づきでしょうか。ダブルは退化では無く、「先祖返り」であるという事です。言葉の揚げ足取りみたいになってしまいますが、退化した結果ネクタリーとなったのであって、本来の花弁の姿に戻っただけですから、先祖返りが正解です。まぁ、この先祖返りも私は納得してないのですが……それは後ほど。

と、ここまでだとただのイヤミな揚げ足取りなんですが、ここからが本題です。まずは被子植物の系統樹を見てもらいたいと思います。立派なものがこちらで公開されているので引用を控えますが、ここで注目してもらいたいのが、キンポウゲ目の位置です。キンポウゲ目にはキンポウゲ科以外にもメギ科やケシ科などが含まれますが、キンポウゲ科は他の双子葉植物とはこんなにも早い段階で系統が分かれています。

これが何を示しているかというと、被子植物の進化の過程においてキンポウゲ科は古いタイプの植物、進化があまり進んでいない植物であるという事を示しています。バラ科やキク科が思いっきり右端にあるのはそれだけ進化した植物であるという意味になります。

さて、ここで考えて頂きたい事は、進化している植物はみんな「萼」を持っているということ。大切な生殖器官である雄しべと雌しべを守る、萼というコートのような器官を進化の過程で獲得したという事実です。クリスマスローズの花びらは、萼片です。キンポウゲ科の植物は皆そうなのですが、萼片が花弁のように変化して花を形作っています。

植物にとって花弁は、花粉を運んでくれる昆虫たちなどポリネーターにアピールするための大事な器官です。紫外線を含む色で、パラボラ効果で暖かさで、花弁に溜めた香り成分でと様々にアピールします。 その大事な花弁を守るためにも、守るものを必要とした植物たちは萼を獲得しました。

クリスマスローズで考えてみると、花びらを守ってくれるものが無い、萼がその代役をしているというのは良い状態では有りません。寒さや枝葉で傷ついたり、害虫の食害にあったり、花びら一枚突破されるとそこにはもっと大切な雄しべと雌しべがあります。もし花弁が本来の花弁の形態であるなら、そこにもう一つガードを置く事が出来ます。

さらに花弁が花弁として機能すれば、萼片は本来の意味での萼として、花を守る器官として働く事も出来るはずです。つまり、キンポウゲ科の中だけで考えれば、ネクタリーが花弁に戻ってしまうのは先祖返りと表現されますが、植物全体として考えればそれは次の進化へのステップであって、決して「退化」などでは無い、という事になるはずです。

話がだんだん飛躍してきましたw 多くのキンポウゲ科が失ってしまっている、というか持っていない花弁をネクタリーという形で獲得しているのは、クリスマスローズの進化の結果なのだと思います。更にそれが花弁となったダブル咲きというのは、もっと進化した状態なのだと、私は考えています。

そもそもの話ですが、昔の分類学の考え方の影響で、「キンポウゲ科は花弁が退化している」と表現されている事がおかしな事なのです。キンポウゲ科の植物は花弁と萼片という両器官を同時に獲得できなかった植物というだけの話で、元々持っていた物が退化したわけでは無いのだと思います。

進化の袋小路に迷い込んでしまってるのかなぁ、とは思いますがだからと言ってネクタリーが花弁化するダブルが「良い物では無い」とか「無理が来て廃れる」というのは、一体どんな根拠があってそんな事を言うんだ、と憤りすら感じてしまいます。 「ダブルが退化」なんて、あえて退化という言葉の持つネガティブなイメージを使ったのだとすると問題です。

ようやく最初に戻って来れましたが、講師の方がどんな意味でその言葉を言ったのかは私には分かりません。その場に居なかった又聞きなので、細かいニュアンスとか正確な言葉も分かりませんが、受け取った側が「ダブルってあんまり良くない物なの?」みたいな気持を抱いたなら、これはもう印象操作というか、何か意図的にそんな発言をしたとしか考えられません。

専門的な知識を持った人たちにする講習なら、多少偏った表現を使ったり、断定的な意見を言っても問題無いと思います。受け取る側もきちんとした知識でフィルター出来ますから。でも、そうでは無い、クリスマスローズが好きで、お花を育てる事が好きで、植物の事はそんなに詳しくないよって言う、大多数の人たちがこの話を聞いたらどう感じるでしょうか。

人に何かを教える立場の人は、常に謙虚で誠実であって欲しいと思います。人間ですからそこに欲目が絡むのも仕方ないとは思いますが、園芸を本来の意味で楽しみ、普及させ、発展させる為にはそんなのは邪魔でしか有りません。今回知り合いから聞いた話は、色々と考えさせられるものでした。

だいぶ長くなってしまいましたが最後に。
自分の目で見て、耳で聞いて、心で感じて、そうして考えた事を大切にして欲しいと思います。

2013年2月18日月曜日

クロアチクス・ダブルが咲きました。

例年よりは遅れてようやく開花してくれました。花の大きさが分かりにくいですが、植えているのが 15cmロングスリット鉢なので、小さい花だという事がご想像できるかと思います。

サイズは 2.5cmくらいで、うつむいて咲きます。 入手してからけっこう年数が経っているのですが、欲しいという知り合いが順番待ちしているので、毎年のように小分けにしてしまっています。

今年は花が二つ咲くこのくらいの株が二鉢だけになってしまいました。株に力を付けるためにも、しばらくは株分けできそうに無いですね。実際のところ、原種は無理に採種するとあっけなく作落ちします。

たぶんこの状態の株で一つの花丸ごと分の種子を採ると、来年は花茎が上がらずに咲かなくなると思います。なので本当なら花粉親としてのみ交配に使い、花茎が3本くらいは上がるような充実株に育ててから採種した方が良いです。

 この花は雌しべが三つあります。それぞれが袋果と呼ばれるさやに生長しますが、原種の場合は種子の数が少ない物が多くて、一つの花から多くは採れません。

ただクロアチクスの場合は大きなさやを付けて、種子の数も多く出来ます。採種すると株の消耗が激しい原因がここにあると思うのですが、見た目よりたくさんの種子が採れるのも、クロアチクスの良い点だと思います。

一つのさやに平均して8粒くらいでしょうか。ニゲルなどに比べると少ないですが、原種の中では多い方だと思います。話は変わりますが、ボッコネイはリグリクスに比べると種子採れないですよね。リグリクスが採れすぎるのかもしれませんが……

花はいわゆるバイカラータイプで、デュメトルムのダブルと交配するとこんな花になるのかなぁとか、トルカータスのダブルとならあんな花に……なんて色々と想像させてくれますが、今年はどちらも開花終了。

タイミングがずれてしまったので、それらの組み合わせはまた来年です。今年は無理させずに、原種交配系の小輪タイプへ花粉の提供に留めたいと思います。

そうそう、ダブルと書いていますが、この個体は厳密にはセミダブルだと思います。ある程度時間が経つと内側の花弁が落ちるものがあるので。ただしその程度が面白くて、全部落ちてしまう花、二、三枚残る花、全く落ちない花など状態によって分かれます。

完全に花弁化していないと考えるのか、キンポウゲ科なんだから花弁は落ちて当たり前でしょ? と考えるべきなのか、その辺りちょっと悩みます。ハイブリッドの完全なダブルは、種子が採れる頃にも花弁は落ちません。 脱落しないようになるという事は、花弁がより萼片的な性質を獲得すると言う事なのかもしれません。

2013年2月16日土曜日

今年の大木さんの花

大木さんの花は何か心引かれるものがあって、毎年数鉢ずつですが購入しています。中でもデュメトルム交配のシリーズは自分の好きなタイプの花が多くて、毎年一つは選んでしまっている気がしますw

今年の一鉢はこのデュメトルムF3のコンパクトタイプ。背が伸びずに小さくまとまるタイプのようです。花の大きさは3.5cm程で、原種のデュメトルムダブルより一回り程大きい花です。

花びらに撚れが見られますが、白い花なのでかえって趣を感じます。乱れの無いかちっとした花型も白い花に合いますが、風で揺れるさまを思わせるようなゆったりした波は有りな気がします。

ここから更に小さな花に持って行くか、ある程度草丈の出るタイプに変更していくか、どちらも面白そうだと思いますが、今年はいい交配相手が居ないので株の充実に努めようかと思います。

 もう一つは中輪のワインレッド色のダブルです。昔からこういう色合いの花が好きで、ついつい手に取ってしまう事が多いです。今年は淡い色彩のピコティーやピンクが人気のようですが、私は相変わらず渋いグリーン系とか、ワインレッドやダークレッドの花ばかり買ってる感じ。

この花はかなりの充実株だったので植え替えましたが、根を見て判断する限りだとトルカータスの交配系では無いかと思いました。かなりトルカータスの形質が強い根をしていました。ちなみに上のデュメ交配は、ほとんどデュメトルムそのものな根っこでした。

他にも苞葉の形質、花の立ち上がり方などからトルカの血筋じゃ無いかと判断していますが、花の形と色合いにプルプラの雰囲気も感じています。ただ、かなり遠い祖先にプルプラ入ったのかも? 位の感じ方ですが。

こちらの花とはグラハムさんのトルカ交配系小輪と交配してみようと思っています。どちらも赤系でダークな色彩の花なので、あまりパッとしたものは出来ないでしょうけど。渋く落ち着いた小輪の花になればいいなと思っています。

今年の発芽苗

早いものは昨年末から発芽を始めていましたが、遅かった原種もボチボチ発芽を初めて揃ってきました。全体の傾向として、やっぱり純粋な原種程発芽が遅いようです。

写真の中で右端一列と左から三列目の上から二番目。これらはどれもハイブリッド同士の交配です。やはり発芽が早くて、本葉が出始めているものも。

右から二列目の一番上は、ハイブリッドですがゴールド系。昨年開花したネオンタイプで、小輪で丸弁の形の良い個体のSelfです。やはりちょっと弱さが出ている気がします。

その下の3ポットはニゲルの素心系のSelfですが、これは毎年発芽が遅いのでこんなものでしょう。二月下旬にならないと芽が出てきません。残りはだいたいが原種同士の交配か、原種ハイブリッドです。

左から二列目の上から二番目。まだ発芽していませんが、これが今年もっとも大切に考えている交配苗です。わずか5粒しか採れなかった貴重な種子ですが、発根は既に始まっているようでポットの底から根が確認できました。

地上部が出てくるのが待ち遠しいですが、交配の組み合わせを考えるともしかしたら双葉は……? 結果はどうなりますやら。

2013年2月13日水曜日

アブルジクスが開花しました。

原種の中では花が大きくて、遅咲きである事が知られているアブルジクスが咲き始めました。この株はNSだと思いますが、葉の特徴や花の特徴から交雑していないと思います。

鉢は15cmのスリットロング鉢。花のおよその大きさが分かると思います。手持ちの原種の中では、アブルジクスが一番の遅咲きなので、この花が咲くと今年もそろそろ終盤だなぁ……なんて思います。

落葉性の原種ですが、寒風に当てないとこの時期までギリギリ葉が残ります。茶色く枯れ混み始めているので、直に自然と枯れてしまうのですが。

花はヴィリディスを一回り大きくしたような感じと言いますか、濃いめの緑色でしっかりした花を咲かせます。あまり黄色の色素は感じません。

時々香りのある個体の話を聞きますが、アブルジクスには香りが無いのが標準のようです。あっても緑茶の香りというか、変なにおいが少しするくらいです。

アブルジクスの変異個体群と言われる MT0002 は開花時期も早く、花に香りもあります。ベースの緑色ももっと明るい黄緑色で、花の形もやや抱え咲きの丸弁傾向です。

全ての MT0002 がそうなのかは分かりませんが、我が家で今年7年目を迎える MT0002 はそんな感じです。あくまで想像ですが、ボッコネイの本土タイプと交雑して成立した個体群なんじゃ無いかなと思っています。遺伝子の調査が進めばいずれ解明されるかもしれません。

2013年2月10日日曜日

クロアチクスの特徴

前に紹介していたWM9510というウィルさんコレクトのクロアチクス。今では一番花にSelfで受粉させていたのが、こんな感じに実っています。まだ生長過程ですが、すでにアンバランスな感じに大きく、長く果実が生長しています。

クロアチクスはこのように、花びらの大きさに対して長大な袋果を付けるのが特徴の一つだそうです。アトロルーベンスはここまで大きくなるものは希で、小振りな感じです。

この個体は、さすがウィルさんが現地で選んだものだけあり、クロアチクスとしては大輪で花型の整ったものです。色彩的なバラツキが少ないクロアチクスですが、花型や大きさにはけっこう違いがあるようです。




特徴として誰もが注目する花梗の繊毛も、この状態でも脱落したりせずにしっかり、びっしり生えています。

クロアチクスとして流通している個体の中には、開花初期には繊毛が確認できますが、雄しべが落ちる頃に繊毛も一緒に脱落するタイプが時々みられます。

また最初から繊毛がみられない個体もまま見かけます。人によっては繊毛の有無だけでクロアチクスを判定するのは間違いだ、と主張する人がいますが、そもそもクロアチクスをアトロルーベンスから独立種として新種記載したご本人、ウィルさんが重要な特徴として花梗や、苞葉の裏の繊毛を上げています。

植物の分類で注目される事の多い繊毛の有無は、たかが毛の有る無し……などとはとんでもなく、種を同定する上では重要なポイントです。検索表でも上位に出てくる事が多い程です。逆に言えばこの形質は遺伝的に越えられない壁を持っているということ。

ウィルさんによると「若い葉や花梗など」に繊毛がある、というのが特徴のようですので、生長過程で脱落する場合もありそうです。なので、開花の進んだ個体だと繊毛が無いように見えるものもあるかもしれません。ですが重要なのは、開花初期など成長の初期段階では必ず生えていると言う事。注目して判断すべきはここであり、花梗の繊毛の有る無しだけで論ずるのは早計かもしれません。

 ちょっと寒い日が続いているので開花が遅れ気味のクロアチクス・ダブルですが、ようやくこんな感じで開いてきました。

しっかり開花したらまた写真で紹介しようと思います。この個体は苞葉の裏にはしっかり繊毛がみられます。その他の特徴もクロアチクスとしての定義から外れていません。

袋果も大きく長く生長します。その頃の写真もいずれ紹介できると思います。今年は一つはSelfで採種して、もう一つは何か面白そうな花と交配しようと思いますが、何にするかまだ考え中です。

2013年2月8日金曜日

抱え咲きのブラックダブル

クロアチクスのダブルが咲くまでもう少し掛かりそうなので、今回は先日のとは別のブラックダブルをご紹介します。

マットブラックでは無いので、今ではありふれたブラックダブルの一つと言えると思います。評価できる点は丸弁で抱え咲きである事。

それから花弁の幅が広くて撚れが無く、厚みもあってしっかりしている事。ここからマットブラックの似たタイプと交配していくと完成型に近付きます。

グレーマーブルで更に花型の良い物もありますが、その花を交配に使うとどうしても黒から離れてしまうようです。花型が良いだけに残念ですが、マットな色味は突き詰めると本当に黒になるので、やっぱり色を重視して交配する方が良さそうです。

ちなみにこのタイプだと、セルフではあまり黒は出てきません。ダークパープルになるものが殆どです。

2013年2月2日土曜日

咲き分けのブラック・ダブル

2010年に初開花の松浦園芸さんから苗で購入したブラックダブルです。艶のある黒にやや赤味の入るグレーのピコティになる花で、非常に気に入っている花なんですが、これがまたくせ者でw

右後ろに写っている花をご覧になれば分かる通り、この個体はダブル、セミダブル、シングルと咲き分けます。

不完全なダブルの個体で、株に力が付くとダブルになったりとか、一番、二番花までダブルで三番花はシングルに咲くとか、そういう物は時々見ますが、これは一番花でもダブルにもセミダブルにもシングルにも咲くし、一番がシングルでも二番花がダブルになったりとか、とにかく安定しません。

 それともう一つ、この個体は花茎が伸びません。花芽の根元から細めの花茎が数本伸び上がって、その先に1~3個の花を付けます。

今年は花芽が三本出来ましたので、地際から花茎が三本上がっていますがどれも非常に貧弱で短い。普通のクリスマスローズのように、太い花茎が一本すっと伸びて先で枝分かれするので無く、根元から分かれます。

とてもじゃないが良い性質とは言い難いです。ですが、何か面白みを感じる個体でもあります。花は好みなので、この株にいくつか交配を試しています。来年あたりからそれらが咲いてくると思いますが、さて、どんな花になりますやら。

あとこの個体、葉芽が出てくるのが非常に遅いです。交配種なら開花のタイミングで、新芽がある程度大きくなっているのが普通なのですが、こやつは下手をすると5月くらいまで葉芽が出てきません。そのまま枯れるんじゃ無いかと毎年ハラハラしてます。

妙な奴だなぁとは思いますが、手が掛かっても律儀に毎年咲こうとしてくれるので、可愛がって育てています。

2013年2月1日金曜日

クロアチクス・ダブル

そろそろ普及してきた感のあるクロアチクスのダブル咲きです。今年も順調に生育中。昨年に入手した個体ですので、まだ小さな一本立ちですが、つぼみは三つ付けてくれました。

クロアチクス全体に言える事ですが、非常に芽吹きが良くて株立ちになりやすく、花も多く付けます。自生地でもわさっと大株になっている写真を見ますし、見かけより丈夫な原種のようです。

この株は現地採取のものではありません。国内のナーセリーで原種クロアチクスの Self 種子より産まれたとか、現地採取のコレクトシードから産まれたとか、色々言われていますが、由来ははっきりしません。

花を見る限りでは、クロアチクスっぽくも有り、アトロルーベンスでもいいんじゃ? と思う部分も有り、どちらなのかよく分かりません。トルカータスなどとは明らかに違うので、まぁどちらかなのでしょう。

クロアチクスの特徴の一つとして真っ先に上げられる、花梗や苞葉の裏の「繊毛」は、あまり多くはありませんが長めの毛が生えています。これを持ってクロアチクスとして良いのかどうか私には分かりません。ただ、花色、苞葉の様子、草姿、根の様子、葉の様子、落葉性の強さなどを鑑みるに、クロアチクスなのかなぁと言うところです。

まだつぼみなので開花したらまたご報告しようと思います。昨年咲いた花はいくつかの花粉親に使って、つぼみの頃からしっかり袋掛けして「厳密に」Self で採種しました。

その種子がそろそろ発芽を始めていますので、数年後には分離するのか、ある程度の変異幅で固まるのか、はっきりすると思います。

この個体自体は育てやすくて、花も可愛らしく野趣があって育てていて楽しいものです。原種だなんだとこだわらずに花の良さだけを愛でていれば、それこそが幸せなのかもしれません。でも、せっかくだし交配してみたいと思いますよね。

2013年1月25日金曜日

卑弥呼

初めて見た時、その凛としたたたずまいと、強烈な赤しべの美しさに戦慄を覚えたクリスマスローズがあります。それが若泉ファームさんの作る「卑弥呼」です。

最初に写真で目にしたのは3年前になりますか。すごい花だなぁと思ったのは今でも忘れません。それから何度かネットショップで見かけるものの、いつも品切で購入できず。

今回ようやっとタイミングが良かったのか購入できました。赤弁赤しべの憧れの花です。

花だけに注目がいきがちですが、全体のたたずまいあってこその卑弥呼。花茎の伸び具合、うつむき加減の咲き方、株元にまとまる葉と魅せる要素がいくつもあります。

その中でも雄しべの開き方。雌しべに添ってすっと伸びて、先が開く姿が何とも艶やかでたまりません。まっすぐに日輪のように開いていく雄しべもありますが、それとは違った和を感じさせる慎ましやかな開き方。

 卑弥呼は実生で作られている品種ですので、一株毎に顔色が異なります。花びらの形、色、そしてネクタリーの色。

ネクタリーの色は花びらと同色の赤系とこの花のような緑系があるようです。どちらもそれぞれの美しさがあるので、どちらも卑弥呼であって良い。

赤ネクタリーは全体の配色をさらに引き締め、緑ネクタリーは葯のクリーム色と合わせて視線を引き込む色合いだと思います。

自分はどちらも好きですが、あえて選ぶならこの緑ネクタリーの方でしょうか。落ち着きの中にも若々しさが感じられて、未来を起草させる花だと思います。

うん、なんか興奮してて文章がまとまらないw

デュメトルムの不思議

デュメトルムを見ていて、最近気付いた事があります。

それは、蜜腺(ネクタリー)の数が8個だと言う事。写真の花はダブル咲きのデュメトルムなので花弁化していますが、枚数は8枚です。

この株は今年は花が二個しか付きませんでしたが、どちらも同じように8枚でした。

原種らしい楚々とした趣はあるけど、豪華にしたい時にはちょっと寂しいなぁ……

この頃交配種の花で、「多弁咲き」という豪華なものをよく見かけます。花弁の数がとても多いけど、あれはどこから来ているのだろう?

手近にあったデュメトルムの株を全部調べてみましたが、右の写真のように今咲いている全てのデュメトルムがネクタリーは8個でした。

今年はスロヴェニア産のものと、国内ナーセリーの株しか咲いていないので、ハンガリー産はどうかなと思うのですが、上のダブルはハンガリーで発見された個体由来のものだし、デュメトルムのネクタリーは8個なのかもしれません。

ちなみに他の原種を数えてみましたら、トルカータスは13から15個、ムルティフィダスは13、ボッコネイ、リグリクスは18前後、プルプラセンスは18から21でした。クロアチア産のトルカだけ妙に少なくて、6個。ただこれは一株だけなので、他の株が咲くまで分かりません。

試しにデュメトルム交配という交配種も調べてみると、デュメの血を強く感じるタイプは8個、よりハイブリッドな感じのする花は15個くらいとネクタリーの数に変化がありました。これも面白い現象ですね。

この記事を読んでくれた方で、お手元にデュメトルムの開花株がある方はぜひネクタリーの数を数えてみて下さい。8個以外の数で原産地のはっきりしているものがあれば、情報をお寄せ頂きたいです。

2013年1月24日木曜日

今年のヴェシカリウスの様子

一昨年調子を崩してしまい、昨年は手前の芽が動かないままだった6年目を迎える初代ヴェシカリウスです。昨年春の終わり頃に、手前の芽当たりが少し動いたのですが、やっぱり今年も動きませんね。

その分なのか奥側の芽が太めの二つと右端の細めの一つと三芽出てきました。良くても5枚で葉が止まりそうなので、今年も花は咲かずに終わりそうです。うまくすれば来年こそ……

今年からスリット鉢をやめて、底が網状になっている深めのプラ鉢に変更しました。サイズは18cmのものですので、本当ならもうちょっと高さが欲しいところ。

それというのも、やっぱりヴェシカリウスの栽培には、深さのある培養土が必要だと分かってきたからです。実は昨年の3月に上の写真のヴェシカリウスが枯れてしまった時の保険にと、双葉の苗を二本購入しました。シーズン終わりだったので、今タネで買うよりお得だったような。

 それをこんなポットに植えて、約一年経った二年目の姿がこれです。「超ロングポリポット」という名称で売られていたポットで、特に使うアテも無かったのですけど、面白いと思って10個くらい買ってあったものです。

ふと思いついてこれにすぐに植え替えました。サイズは9cmポットで、高さが20cmあります。アホみたいに深鉢ですw 下から1/3はナチュライトの大粒が入っていまして、培養土はハルキガーデンさんの「クリスマスローズの土」をそのまま使っています。わたしの標準用土です。

植え替え後の4月下旬に、左側のポットの一株が本葉を一枚展開してくれました。よく知られている通り、ヴェシカリウスは発芽初年度は双葉のままで休眠に入ります。ただ、全部がそうでは無くて、本葉が一枚出てくる株もある、という話でした。雪割草みたいだなと思ったのですが、植え替えによる刺激で本葉が出てくれたのかもしれません。 ジベレリン処理が効くかもしれませんね。

その後はてきとうにあまり乾燥させずに夏越し、10月中旬に今年の葉が伸びてきました。一年目で本葉を出してきた左の株はこの通りで、二枚展開しています。下から三枚目も伸びてきてます。

右の株は二枚展開しましたが、三枚目の葉芽はまだ見えません。多分ですが今年は出てこないんじゃ無いかなと思います。

このまま植え替えせずに秋まで育てて、超ロングポリポットの10.5cmのものに植え替える予定です。肥料は案外好きそうなので、葉面散布やら液肥やら時々やってます。

まだ二年目のチビ助のくせに、初代の脇芽と同じくらいの葉の大きさになるとは……貴様やるなっ! 想像するしかありませんが、長くまっすぐに根が伸びてる気がします。このポットは四つしか穴が無いので、根が下まで来てるかどうかも見ても分からないのが残念です。

2013年1月21日月曜日

リゲルの花

つぼみから咲くまでなかなか生長しなかったバラーディアエがようやっと咲き始めました。種子親に斑入りのリヴィダス、花粉親にダブルファンタジーを用いた交配です。

今のところ全ての株が薄いピンクのつぼみを上げていますが、どれも似たような花色になりそうです。開いてきたのはまだ4株ですが、全てこの写真と似たような感じで、バラーディアエらしい花になりました。

ちょっとアクセントになっているのは雌しべの先端にピンク色が入っている事。これはダブルファンタジーから受け継いだ形質です。リヴィダスの斑入りは雌しべに色が乗ってなかったので。今のところ開いている株は全て雌しべがピンクになってます。優性遺伝なんですね。

花の大きさは一般的なエリックスミシーと同じくらいで、意外と大きいです。草姿がコンパクトですっきり立ち上がる割に花が大きいというのは、鉢物としてみた場合に良い性質だと思います。耐寒性はリヴィダスよりは強くなっていると思いますが、ニゲル程あるかな?

根の形質はリヴィダスよりニゲル寄りです。しなやかで折れにくく、扱いやすい根になっていました。きっと過湿にもある程度耐性がついて育てやすくなっていると思います。事実、双葉からここまで一本も枯れてないし。

ニゲルの八重を使っても簡単にはネクタリーが変化しませんねー。有茎種のダブルとか聞いた事ないし、壁があるのかも。この交配で自殖出来れば良いのですが、残念な事に H. x ballardiae は不稔性と言う事が知られています。逆交配のリゲルといえど、きっとタネ出来ないんだろうなぁ……

試しに花粉付けはやってみますけどねw 無駄と思いつつもとりあえずやる。それがわたしのポリシーです。

2013年1月19日土曜日

WM0018が咲きました。

昨日の写真なので開葯していないため、厳密には開花一歩手前ですが今日は花粉が出てたのでOKでしょう。

内側の花弁がやっぱり一回り小さい感じがしますが、これが元々の形質なのか、株に力が無いせいなのかは来年以降を見る必要があります。

厚ぼったい花びらはあまり撚れたりしなさそうで、整った花型の花になるんじゃないかと期待して居ます。つぼみがもう一つありますが、今期は株がまだ小さいので無理させずに取ってしまおうか、咲かせるだけ咲かせてみようか考え中。

 裏側は掠り模様のダークパープルです。表側にこの色が透けて見えるので、正面からだと緑に紫をにじませた色合いに見えますね。

もう少し花びらが厚くなると透けずに綺麗なグリーンになるのかなと思いますが、アントシアンの性質から言って単に透けて見えているのでなく、開花が進むと生成されているのだとしたら意味ないです。

花びらの断面をスライスして、光学顕微鏡で観察すれば一発で判断出来るんですけど、学生時代じゃないからそんな機材も設備もないw 色の変化を毎日観察して推測する事にします。

どんな花と交配しようかと考えていましたが、とりあえず今日はこちらのグラハム交配の花に花粉を付けてみました。花の大きさが 3cm程の小輪で可愛らしい花です。

おそらくですが、トルカータスやアトロルーベンスなどの原種を使った原種系の交配株だと思います。落葉生がけっこう強くて、年内には黄葉した葉が枯れ始めました。

この花の葉っぱがなかなか特徴があって、芽出しの頃はパープルリーフ、葉の形状はまるまっちぃボッコネイの雰囲気があります。ごわごわしない柔らかい葉質で、いったいどんな原種の性質でこの葉になったんだろうと悩ませてもらってます。小型で邪魔にならない自分が理想とするタイプの葉です。

昨日のデュメトルム・ダブルが開花しました。花粉も正常に出ているようですし、雌しべも正常でした。クリーム色のピコティがしっかりまわってなかなかの美人さんだと思います。

これで大きさが一円玉よりちょっと大きいくらいと言う小輪。このままのサイズでピンクやら赤やらバイカラーなんかになったら、実に可愛らしいと思います。

この株の作り手の大木ナーサリーさんでは、ほぼ同じ大きさの純白の花を作出していらっしゃいます。ピンクが出てくるのももう少しかな?