2011年1月28日金曜日

ヴェシカリウスの栽培で思うこと

これは昨期のヴェシカリウスの12月初旬の様子です。ちょうど植え替えて一ヶ月ほど経ったところと思います。この芽を見て「アシタバみたい」と言った知り合いがいるんですがw セロリはともかくアシタバって…マニアックだ。

昨日紹介した写真と見比べていただくと、結構大きくなったなぁと実感できます。入手してから三回夏越しを経験しました。でも、いつも秋に植え替える時に、本当にこれでいいんだろうか? と疑問に感じていたことがありました。

クリスマスローズの解説書を見ても、ネットで栽培の情報を見たり、実際に育てている方の記事を調べたりしても、皆さんヴェシカリウスは夏場の休眠期は水を控えると書かれています。それはもう、呪文のようにそう繰り返されています。

本当にそうなのだろうか? この疑問を持ったのは最初の夏越しの後でした。ようやく太い根が増えてきて、動き出した地上部に呼応するように茶色く変色した根から新しい真っ白な新根が伸び始めていました。あぁ、生きていてくれた、良かった良かった。

でも、何か元気がない気がする。太い根はちょっとシワが寄った感じで、腐敗してはいないけど健全な感じでもない。本当に休眠期は最低限の水管理でいいのだろうか? 自生環境でも本当にそうなのか? と思ってしまいました。実際の話、わたしはヴェシカリウスはおろかどのクリスマスローズの自生地も見たことはありません。せいぜい日本国内の野草類を写真撮ってまわってるくらいです。

その少ない経験の中で、なんかこの根っこの様子と性質がアツモリソウに近いなぁと感じました。この植物、水、大好きなんじゃないのか? と思ったわけです。今はもう知れ渡っている事実ですが、アツモリソウ属は水が大好きです。アツモリソウを枯らしてしまう原因の大半は、休眠中に水やりが不足する冬場のダメージが生育期の高温で根痛みから腐敗へと至る場合です。

もしかしてこの種も栽培が難しいって、休眠中に水切り過ぎて根にダメージ溜めちゃってるせいじゃないのかなぁ、ふと、こう思ったわけです。そこで前々期の二度目の夏越しは、植え替えの時にカヤツリグサの仲間のヒメカンスゲ(中透け斑)をちょっと端に植えてみました。この種類は特に乾燥に強くて、原種の福寿草の鉢植えやキスミレの鉢植えに同居させたりしてます。

目的は鉢内の水分の目安を知るのと、早く休眠して地上部が無くなってしまう福寿草やキスミレの水やりを忘れないためなんですがw とりあえずヒメカンスゲの葉先の枯れ込みを確認しながら、最低限の水分を保持しながらヴェシカリウスにとって家に来て二回目の夏を過ごしました。

結果は……あまり良くありませんでした。ちょうど上の写真がその二度目の夏を超えた姿です。芽出しも順調でしたし、根の腐敗ももちろんありませんでしたが、やっぱり太い根ほどシワが寄った感じで元気がない。うーん、水もっとやった方が良さそうだなぁ、と判断しました。そこで昨期の生育が終わって葉が黄色くなった頃に、鉢の上部3cmほどの用土を大粒の赤玉土に入れ替えて、三度目の夏を迎えました。

夏越しの方法は、「雨の当たる日陰において他のクリスマスローズと同じ管理」です。昨年は梅雨の前からどんどん暑くなって、まれに見る猛暑になりました。梅雨に入るのは遅くて長雨はあまり多くありませんでしたが、それでも常に鉢の表面は軽く湿っている状況で夏を過ごしました。

ただしヴェシカリウスの栽培をしているのは小淵沢です。平地の甲府などと比べると熱帯夜にもなりませんし、日中も日陰なら極端に高温にはなりません。そう言う避暑地のような環境だという点は、明記しておかなければならないと思います。

時々心配になって根茎が腐っていないか、カビなど発生していないかをチェックしましたが、特に問題なくみずみずしい感じでした。お彼岸が過ぎる頃には鉢の表面にはスナゴケのようなコケが生えてきました。そして11月上旬に芽が動き出したのを確認したので鉢を開けてみると……

おぉ! 根が褐変していない! 明るい茶色で、シワもなくてみずみずしい色をしている。早くも白い新根が順調に伸びている。なんというか状態の良いチベタヌスの根に似た感じだな、と思いました。みずみずしくて、表面がつるっとした感じでちょっともろい。前の植え替えの時と比べて、根量もかなり増えたし状態も良さそうです。これが本来の状態なのかなと。

さて、これはあくまでも昨年の夏一度きりの結果です。しかもたった一鉢のヴェシカリウスの避暑地のような夏に過ごしやすい環境での話です。年々暑くなっていく気がする平地ではこんな夏越しをすれば、あっという間に腐敗して枯れてしまうかもしれません。ですが少なくとも、ヴェシカリウスは休眠中でもしっかり水を欲しがるタイプらしい、と言ってもいいのではないでしょうか。

今年は根にあまりダメージがなかったお陰か、それとも単純に株が成熟してきたせいなのか昨期よりずっと順調に大きな葉を出してくれています。開花は来年になりそうですが、もう一度同じように休眠中でも水を切りすぎない管理でやってみようと思います。

※地植えだとヴェシカリウスがちゃんと育つ、とBlogで紹介している方が何人かいらっしゃいました。それってやっぱり休眠中でも適度な水分が保たれているから? 鉢植えで開花させている方は皆大鉢で仕立てているのもその辺に理由がありそうな気がしてます。

2011年1月27日木曜日

今年のヴェシカリウスとアブルジクス

今年で4年目に突入するヴェシカリウスです。入手したものが二年苗だったので、5年経過で6年目に突入という事になります。

地下部は一つなんですが、入手の翌年から芽が二つになって株立ちになってくれました。未開花のヴェシカリウスだと珍しいかも?

去年は4枚目の展開で終わりましたので、今年は5枚、6枚目の葉を展開してくれるのを期待しています。さすがに花芽は無いでしょうから、あと一年か二年は順調に育てて上げないとダメでしょうね。根は昨年に比べると倍以上に増えて、クリーム色の太めでもろい根っこがたくさんになりました。

用土はチベタヌスと同じ、基本用土に2割赤玉土小粒を混ぜたもので植えています。表土のみ1cmくらいを赤玉土小粒のふるい分けた大きめで被っています。やはり地際が痛みやすいのと葉裏の汚れを防ぐ為です。

ラナンキュラスの葉のように見える異色の葉の持ち主ですから、過湿やカビなどには特に注意しています。そういえば他のクリスマスローズがかっぱん病やベト病になった時でも、ヴェシカリウスは健康でした。葉の物理特性が他種とはかなり異なるせいかもしれませんね。

昨年に大木ナーセリーさんから開花株で購入したアブルジクスです。フェダーナーセリーのナーセリーシード由来の株だそうですが、大木さんの見立てだと交雑しているんじゃないか? という事でした。

買った時にも思いましたが、花茎の途中で枝が出て分かれる様子がどことなく他のどれでもない感じがしたのと、別に交雑しててもいいやと思わせるすっきりした香りがあったのでゲットした次第です。

強めの優しい柑橘系の香りがあります。オドルスのような甘ったるい感じは全くなくて、かといってリグリクスのような辛口なすっきりした芳香とも違う、なんの匂いと表現していいやら難しい香りです。

あえて言うならグレープフルーツの香りから苦みを抜いた感じでしょうか。香りに苦みって言うのも変な表現ですが、雑味がないというか、本当に優しい感じです。

花の大きさはオドルスくらいで、開花はオドルスから一ヶ月以上遅れました。新芽の動き出しも遅いようです。昨年付いた葉はあまり細葉ではなくて、アブルジクスらしくない? 葉でした。

花を真上から見るとこんな感じです。花びらの先端エリア半分ほどに、細いピコティが入っています。あれ? この特徴って、MT0002の特徴と同じじゃなかったっけ……

MT0002はまだ開ききっていませんが、こぼれ始めた花びらの間から良い香りがしています。香りを持つ、弁の先端付近にピコティが入る、がMT0002の特徴ならば、この株も同じコロニーの出身なのかもしれません。

つぼみを比較するとどちらも丸くて大きめです。高杉さんから来たMT0002は花茎があまり伸びずに地際で咲き始めてしまいそうですが、それ以外はこの二株はとても似ているようです。

開花後に出てくる葉は、アブルジクスならばヘルツェゴビヌスのように細かく分岐した葉になると思います。そろそろ成熟個体になってもいい頃ですし。さて、どんな葉が出てきますやら。